所得税

所得控除の種類を解説

 

悩んでいる人
所得控除とは何ですか?分かりやすく教えてほしい

 

記事の内容

・所得控除とは

・所得控除の種類、内容

・所得控除の計算方法

本記事では、所得税の計算の中でも大切になる所得控除について詳しく説明していきます。

 

所得控除とは

所得控除とは、所得から一定の金額を差し引く制度のことです。

所得税は所得金額に対して課税されるため、所得金額が大きければ大きいほど税金も大きくなります。

しかし個々の事情などが考慮されないままでは納税者の負担は増えるばかりです。

そこで、納税者の個人的事情に合わせて計算上の所得金額を減らし納税者の負担を減らすという措置が取られています。

所得控除は所得金額を減らし所得税を小さくします。

 

なお所得控除は、所得税法上いくつかの種類に分かれており、条件や所得額はその種類によって異なります。

所得控除の種類を簡単な一覧にまとめました。それぞれに細かな規定がありますので、お気をつけください。

 

所得控除の種類、内容

控除の種類 内容
雑損控除 災害又は盗難などによって損害を受けた場合等に一定の金額の所得控除を受けることができます。
医療費控除 1月1日から12月31日まで1年間において支払った医療費の金額は一定額を超える場合に所得控除を受けることができます。
社会保険料控除 健康保険、国民健康保険、公的年金等を支払った場合に所得控除受けることができます。
小規模企業共済等
掛金控除
小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に所得控除を受けることができます。
生命保険料控除 民間の保険会社に生命保険料などを支払った場合、支払った金額のうち一定の金額の所得控除を受けることができます。
地震保険料控除 民間の保険会社に地震等保険料又は掛金を支払った場合、支払った金額のうち一定の金額の所得控除を受けることができます。
寄付金控除 ふるさと納税や特定公益増進法人など「特定寄付金」を支払った場合、支払った金額のうち一定の金額の所得控除を受けることができます。
障害者控除 自分自身、家族が所得税法上の障害者に当てはまる場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
寡婦控除 自身が寡婦である場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
ひとり親控除 自身がひとり親である場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
なお、ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用されます。
勤労学生控除 自身が勤労学生である場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
扶養控除 所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
配偶者控除 所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
配偶者特別控除 配偶者控除の適用を受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じ一定の金額の所得控除を受けることができます。
基礎控除 所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから差し引くことができる控除の1つで、一定の金額の所得控除を受けることができます。

 

 

所得控除の計算方法

 

雑損控除

雑損控除の対象つなる原因は

①震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害

②火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害

③害虫などの生物による異常な災害

④盗難

⑤横領

と規定されており、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。

雑損控除は次の2つのうちいずれか多い方の金額となります。

1.(差引損失額)-(総所得金額等)×10%

2.(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円

 

 

医療費控除

医療費控除は自分だけでなく家族のために支払った医療費も対象となります。

金額は次の式で計算した金額となります。(最高で200万円となります)

実際に支払った医療費の合計額-受取った保険金-10万円

※10万円についてはその年の総所得金額が200万円未満の人は総所得金額の5%の金額となるので注意が必要です。

 

社会保険料控除

社会保険料控除は、会社員であれば、健康保険、厚生年金、雇用保険等が該当します。

個人事業主であれば国民健康保険、国民年金等が該当します。

控除できる金額は、1月1日から12月31日までの1年間において支払った金額となります。

 

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、1月1日から12月31日までの1年間において支払った金額となります。

 

生命保険料控除

生命保険料控除は、1月1日から12月31日までの1年間において支払った保険料を次の表に従って計算した金額となります。

なお、保険契約の時期によって計算方法が変わります。

(1)新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額

年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下 支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下 支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

(2)旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額

旧契約に基づく旧生命保険料と旧個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。

年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下 支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下 支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

 

地震保険料控除

地震保険料控除は、1月1日から12月31日までの1年間において支払った保険料を次の表に従って計算した金額となります。

区分 年間の支払い
保険料の合計
控除額
(1)地震保険料 50,000円以下 支払金額の全額
50,000円超 一律50,000円
(2)旧長期損害保険料 10,000円以下 支払金額の全額
10,000円超
20,000円以下
支払金額×1/2+5,000円
20,000円超 15,000円
(1)・(2)両方がある場合 (1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円)

 

寄付金控除

寄付金控除は、次のいずれか低い金額-2千円となります。

(1)その年に支出した特定寄附金の額の合計額

(2)その年の総所得金額等の40%相当額

※ふるさと納税は、自身の選んだ自治体に対して寄附を行った場合に、寄付金の額のうち2,000円を超える部分について、所得税及び住民税からそれぞれ控除が受けられる制度です。

 

障害者控除

障害者控除はそれぞれの区分に応じ次の金額となります。

区分 控除額
障害者 27万円
特別障害者 40万円
同居特別障害者 75万円

 

寡婦控除

寡婦控除は、27万円となります。

なお、寡婦については、所得税法において下記のように規定されています。

(1)夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人

(2)夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

 

ひとり親控除

ひとり親控除は、35万円となります。

なお、ひとり親については、所得税法において下記のように規定されています。

原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件の全てに当てはまる人です。

(1)その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。

(2)生計を一にする子がいること。

この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。

(3)合計所得金額が500万円以下であること。

 

勤労学生控除

勤労学生控除は27万円となります。

なお、勤労学生については、所得税法において下記のように規定されています。

その年の12月31日の現況で、次の3つの要件の全てに当てはまる人です。

(1)給与所得などの勤労による所得があること


(2)合計所得金額が75万円以下(令和元年分以前は65万円以下)で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること

例えば、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除55万円を差し引くと所得金額が75万円以下となります。

(3)特定の学校の学生、生徒であること

 

扶養控除

扶養控除は、扶養している家族(親族)がいる場合はにを受けることができます。

控除額は次の区分の応じそれぞれの金額となります。

区分  控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等 58万円

 

配偶者控除

配偶者控除は自身の合計所得金額及び、控除対象配偶者の年齢により次のとおりとなります。

※控除対象配偶者とは、配偶者の内いくつかの要件を満たす必要があるので注意しましょう。

控除を受ける納税者本人の
合計所得金額
控除額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超 950万円以下 26万円 32万円
950万円超 1,000万円以下 13万円 16万円

 

配偶者特別控除

配偶者特別控除は控除を受ける自身のその年における合計所得金額及び配偶者の合計所得金額に応じて次のようになります。

令和2年分以降

配偶者の合計所得金額 控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
48万円超 95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超 100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超 105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超 110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超 115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超 120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超 125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超 130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超 133万円以下 3万円 2万円 1万円

 

【参考】(平成30年分・令和元年分)

配偶者の合計所得金額 控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
38万円超 85万円以下 38万円 26万円 13万円
85万円超 90万円以下 36万円 24万円 12万円
90万円超 95万円以下 31万円 21万円 11万円
95万円超 100万円以下 26万円 18万円 9万円
100万円超 105万円以下 21万円 14万円 7万円
105万円超 110万円以下 16万円 11万円 6万円
110万円超 115万円以下 11万円 8万円 4万円
115万円超 120万円以下 6万円 4万円 2万円
120万円超 123万円以下 3万円 2万円 1万円

 

基礎控除

基礎控除は自身の合計所得金額に応じて次のとおりとなります。

納税者本人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超 2,450万円以下 32万円
2,450万円超 2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

※令和元年分以前の基礎控除の金額は一律38万円です。

 

まとめ
所得控除はうまく活用することで課税所得を下げることが出来るためその結果、所得税を下げることが可能になります

しかし、数が多いので全てを覚えるのは大変です。

まずはどんなものがあるのかを確認し、自分自身が活用できるものをおさえておきましょう。

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